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「あの~、何処か痛いんですか?」
影峯 爻哉は学校からの帰宅途中、路地裏に踞る人影を見つけ声をかけた。
「・・・・・。」
人影はまるで自分の事が見られていないと思っているのか、熱心に地面になにかを描いていた。
「あの~、いったいそこで何をしてるんですか?」
爻哉は人影が何の反応も示さず地面に何かを描き続けているのを訝しく思い、少し語気を強めて再び呼び掛けた。
「・・・ッ!?」
人影は自分に声がかけられていることに気付くと、路地裏の奥に向かって走っていった。
「えっ!何で逃げるんだ?・・・とりあえず追うか。」
追いかけようとしたとき、人影が地面に描いていった物が見えた。
それは円に何処かの国の文字がびっしりと書かれた、魔方陣の様な物であった。
「何だこれ?イタズラのつもりか?・・・・・とにかく追いかけるか。」
見れば人影はもうすぐ角を曲がり、視界から消えようとしていた。
爻哉は人影を視界に捉えながらも、さっき見た魔方陣が頭の片隅に残り続けていた。
・・・・・数分後。
「チッ、行き止まりかよ・・・。」
人影は袋小路で立ち止まっていた。よく見れば黒い服に身を包んだ長身の男であった。「さぁ、さっきあそこで描いていた物は、何だったんですか?」
爻哉はさっき見た魔方陣の様な物がどうしても気になり、男に問い詰めていた。
「・・・貴様には関係の無いものだ。」
男は少々声を苛立たせながら、返答してきた。
「言えないような物なんですか?
あの文字も何処の言語なんだ?」
尚もひつこく問い詰める爻哉に男は、
「まさかこの世界の人間に見られるとは、魔法は掛けたはずなのに・・・どういうことだ?」
男は何やらブツブツと考え始めた。
「あの~、あの魔方陣みたいな物は何なんですか?」
爻哉は一人でブツブツ考えている男に声をかけた。
男は顔を上げると、
「・・・まぁ、見られたならばしかたない。
証拠隠滅のために、貴様には死んでもらおう。」
男はそう言うと何処からか漆黒の剣を取り出すと、いきなり斬りかかってきた。
「ちょっ!いきなりそんな・・・、ッ!?」
爻哉が話しかけようとしたとき男の剣の切っ先が前髪を数本切り落とした。
「ほぅ、貴様なかなか出来るな。」
男は自分の一撃が避けられたのを見ると、少し驚いた風に言った。
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