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突如ガシャン、とテーブルの上に朝食のトレイが置かれた。
椅子を引いてヒノエの隣に座った人物は、いかにも機嫌が悪いというオーラを放って存在していた。
「九郎…来たんですか」
「ああ」
それだけ答えると黙々と食事を始める。
事情を知らないヒノエと景時は、困惑気味に目を合わせた。
弁慶は2人を自分の近くに寄せると、なるべく九郎を刺激しないよう、小さな声で先程の一部始終を話す。
「なるほどね。だから機嫌悪いのか」
ヒノエが納得したように呟く。
「それで…将臣は?」
「部屋で屍になっているだろう」
食事の手を止めずに弁慶に話す。
将臣が上げた悲鳴を思い出し、弁慶は苦笑した。
「でも、2人は付き合っているんじゃないのかい?」
「馬鹿な事を言うな景時ぃ!!」
景時の素の質問に九郎は持っていた箸をテーブルに叩き付けて怒鳴る。
周りの生徒達が何事かとこちらを見てきた。
だが、弁慶もヒノエも、口には出さないが同じ疑問を思っていた。
それが証拠に、九郎は真っ赤になっている。
おそらくは、素直になれないだけなのではないだろうか。
「まあ九郎、落ち着けよ。せっかくの朝食だしさ」
「っ………」
ヒノエの言葉に、はたと周りの生徒の視線に気付いた九郎は、気まずそうに黙り込んだ。
「美味しいご飯は美味しく食べましょう、九郎。ほら、このサラダも美味しいですよ?」
「ああ…そうだな。すまないみんな」
素直に詫びた九郎は勧められた通りにサラダを食べ始めた。
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