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放課後、部活も終わった頃に蒿は俺の前に姿を現した。
「遅かったな。」
「あはは…まさかお腹壊すとは思わなかったよ…。」
「あの化け物胃袋に釣られて喰うからだ…全く……。」
俺は呆れながら荷物を肩に掛け、蒿と共に剣道場を後にした。
校門付近で雛と待ち合わせをしているから、俺達は急いでその場所まで向かおうとしていると、雛が目の前に現れた。
「やあ、二人とも。」
「なんだ…わざわざこっちに来たのか?校門で待っていれば良かっただろう。」
俺がそう言うと、雛はめずらしくその無表情の顔を僅かに歪めた。
「紅蓮、蒿。信じられないかも知れないけれど…」
「ああ、ここに居たのか…。」
雛の言葉を遮るように宮方師匠が俺達三人の前に走り寄って来た。
その表情は険しく、何かあったと言わんばかりの形相だった。
こんな師匠は初めて見る…。
「紅蓮、蒿くん。もう雛くんには話しているが、よく聞いて欲しい…。」
「何か…あったんですか…?」
蒿が確かめるように言葉を発した。
「…ああ……。アリスくんが…」
「誘拐された…。」
師匠が言葉を詰まらせているところに、雛が言葉を補填した。
雛が言った事に俺は一瞬、時間の感覚を失った。
アリスが誘拐された…。
目的は何だ。
金か、それとも神影の残等か…。
それなら仲間の救出だろう。
あるいは…
「アリス自身…。」
「紅蓮…。何か心当たりでも…?」
雛が俺の様子に気づき、その声でみなが俺を見る。
「…無いわけではないが………恐らく…アリス親衛隊…。」
「なるほど…可能性はあり得るね…」
最初に俺の予想に頷いたのは雛だった。
その後に続いて残りの二人もそれに続く。
「そうか…アイツ等……!!許せない、今すぐにでもアイツ等を捕まえて………!」
「待つんだ蒿くん。まだそうと決まった訳じゃない。」
走り出そうとする蒿を師匠が掴み止める。
俺はそれに一息ついて、心の中で冷静な師匠に感謝した。
しかし、アリスは一体どこに、誰に連れ去られたんだ…。
「師匠、アリスが誘拐されたと何処で知ったんです?」
「ああ、そうだな。まずそれから話すべきだったな…学校の校門に手紙が置かれていたらしい。『立花アリスは預かった。返してほしくば探すがいい、返す気は毛頭無いのでな。』と書かれていた。」
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