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返す気は毛頭無いか。
やはりアリス自身が狙いなのか?
いや、ならこんな手紙を置いていく意味がない、むしろ邪魔になるだけだ。
つまり……
「『返してほしくば探すがいい』アリス自身が狙いであって、それが本当の目的ではない。」
俺の言葉に蒿が首を傾げる。
雛は目を瞑ったままで、師匠は真っ直ぐ俺を見て次の言葉を待っているように思えた。
だからそのまま俺は話を続ける。
「そうでなければ、こんな手紙を残す必要はない。なら、奴らには他の目的がある可能性もある。それが何かまでは完全に憶測の範囲でしかないが……」
「ならば、アリス親衛隊が一層怪しい事になるのではないか?もし、紅蓮か蒿くんを本気で潰そうと考えているのなら……あり得ない話ではないと考えるが……」
師匠が考える事は俺も考えた。
しかし、それが正解とも限らない。
なら…
「その可能性もありますが、師匠。ここは二手に分かれて行動しましょう。警察に下手に連絡するわけにも行きません。まず、師匠と雛がアリス親衛隊を調べてください。そっちの方は俺達には出来ないですから…」
俺がそう言うと、二人は頷いて賛同してくれた。
「そして俺と蒿は、片っ端から東都中の隠れ家らしい場所を探し回る。効率は悪いが、他に方法はないからな…」
「分かった。」
そして次の合図で、俺達はそれぞれの役割へと入って行った。
「…はぁ、はぁ…はぁっ…アリス、どこに……」
紅蓮達と分かれアリスを探し始めて、既に一時間が経過していた。
オレはそんなに体力がある方ではないけど、自分の疲労に構っていられるほどの心の余裕は残ってはいない。
アリス親衛隊を追っている先生と雛からの連絡もまだない。
このままじゃ…アリスが……
「がはっ!げほっ、げほっ……」
もう何度吐いただろうか、体力の限界に体はもう何度も悲鳴を上げていた。
それでもオレは立ち上がり、再びアリスを探して走り出す。
そんなときだった。
胸元にしまっていた携帯の呼び鈴が鳴り響いた。
その相手は…アリスだった。
「もしもし!アリス!!無事なのかい…!!」
内心僅かにほっとした。
でも、それは直ぐに全く違うものへと変わってしまう。
「…矢島蒿…」
「………!!。…誰だ…お前がアリスを…!」
「…立花アリスを助けたくば、あなた一人で今から指示する場所まで来い。」
ソイツの声は変声機で変えられていて、男女の区別がつかない。
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