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「…分かった…お前の言う通りにしてやる……その代わり、アリスを今すぐ返せ!」
「それはお前の心掛け次第だ。お前の携帯の送受信情報は常に監視している。おかしな真似をすれば、立花アリスはお前達の前に戻ることはない……指示はメールにて行う。では待っているぞ…プツッ……。」
通話は一方的に切られ、オレはその場に立ち尽くした。
それと重なるように雨の雫石が、オレの体を濡らし始めた…。
あれからしばらくして、俺は学校の教室に戻っていた。
手掛かりが残っているかも知れないと考えたからだ。
しかし相手もプロらしい…不気味なまでに手掛かりというものを消し去っているようだった。
「灯台元暗し…でもない……くそがっ!」俺は悪態をつき、何の手掛かりもない教室を後にしようとした。
その時だった…
「があっ…!!……頭が…何だ、これは……!?」
今までにない感覚、頭の中を幾つものイメージと共に、視界がそのイメージに浸食され始めた。
しかしそれが落ち着くのにそれ程時間は掛からなかった。
「何だ…これは。」
立ち上がった俺は、その光景に驚き、同時に唖然とした。
それは、昼休みのアリスだった。
ただ、それが昼休みの光景なら、他にいなければならない人や物がない。
そこに写っているのはアリスだけだったのだ。
「これはまさか、アリスだけを映し出している?」
確かに、アリスを探す一番の手掛かりは昼休み後のアリスの行動だが…。
「…これは……!?」
俺は目に映るアリスを追うと、俺の知らないアリスの行動までもが視界に映る。
しかしそれは、まるで録画した映像を早送りで見ているようで、気持ちが悪い。
「これは…まさか、俺の能力…?」
たとえそれが分かっても、具体的な使い方も、どういった能力なのかもまだわからない。
だから俺は目に映るアリスを追い続け、正門までやって来た。
アリスは何かに乗り込んだ、恐らくタクシーだろう。
しかしそれから間もなく、アリスは暴れだし、直ぐに気を失った。
「そうか…ならこのままアリスを追えば…!」
そして俺は、アリスを追って全力で走り出した。
全力とは言っても、俺にとっては息が上がるようなものではない。
体中を流れるナノマシンが筋肉を制御し、制限を掛けているからだ。
しかしこのナノマシンによる制限がなくなれば、この俺は間違いなく体が動かなくなると言われている。
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