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貫通の効果が藍沢本人ではなく、その対角線上にある床に作用したようだった。
「………っ!不味い!!」
舞った埃が風に飛ばされ視界が回復した時、藍沢の姿がそこから消えていた。
必死に藍沢の姿を探すが、全く見当たらない。
ドゴゴゴォォォォォォ……
「なっ…まさか……!?」
突然の地響きと共に俺の立っている床が盛り上がり始めた。
まさかと思い、俺は能力を使って床を見る。
床が徐々に透けて行き、下の階にいる藍沢の姿が映る。
「……くっ…………!!」
俺は急いでその場から立ち退こうとするが、間に合わずに床が破れ、開いた穴から豪風が吹き上げた。
「くぅ……!!」
俺は豪風によって床の破片と共に上空に打ち上げられ、藍沢が俺の目の前まで飛び上がってきた。
「お別れです」
藍沢は怪しげな笑みを浮かべ、拳に込めた一撃を空中で喰らわせてきた。
俺はとっさに鉄鞭を盾にしたが、過剰の運動エネルギーを乗せた一撃で、屋上の床に叩きつけられクレーターをその周りに形成する。
「があっ!」
全身に激痛が走る。
だが、それだけでは終わらなかった。
藍沢はそのまま空中で体制を立て直し、俺にむかって落ちてくる。
体が動かない俺は、藍沢の膝をまともに受けて口から血を吐いた。
「ぐはぁっ……!!」
「……後はあなた達に任せます。好きにしなさい。」
藍沢は待機していた男達にそう指示すると、紗雪のもとへと歩いて行く。
そういえば、紗雪の奴は一体何を……そう思い激痛の走る身体に鞭打って首を紗雪の方に向ける。
紗雪は太刀を構えて藍沢を睨んでいた。「次はあなたの番です…!」
藍沢はそう叫ぶと、紗雪に向かって突っ込んで行く。
それと同時に紗雪は太刀を身体の後ろに隠すように構え直し……
「それはこちらのセリフよ…………雷塊」
二人の拳と太刀が交わる瞬間、辺りが一瞬光と轟音に支配される。
視界が回復し、そこに立っていたのは血まみれの紗雪ただ一人だった。
藍沢の姿がどこにもない。
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