PROGRAM2 神影

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あの事件……アリスが誘拐され、その先で蒿が殺された事件から三日、検死を終えた蒿の遺体は矢島の家に帰って来た。 俺達、アリスと雛は蒿のお父さんに呼ばれ、矢島家の密葬に出席する事になった……。 「よく……来てくれたね………」 家の門で蒿のお父さんが出迎えてくれた。 蒿のお父さんには、よくお世話になっていた。 特に俺は、ナノマシン技術者の蒿のお父さんに調子を見てもらっていたし、家出した時も快く迎えてくれた。 「おじさん……」 俺は何と声を返していいか分からず、黙り込んでしまった。 「…さあ、中に入って……蒿が待ってる…………」 俺達はおじさんに言われるまま、家の中に足を踏み入れた……。 「蒿…くん……?…っ……うっ…うわあぁあぁぁぁぁ!!」 蒿の遺体と対面した瞬間、アリスがその重傷の身体を車椅子から離し、蒿の元で子供のように鳴き始めた。 「蒿……」 雛は、その表情こそ変わらないものの、握り締めた拳から血が滲み出している。 俺が間に合っていれば、蒿は助けられたのだろうか……? 死ぬ事はなかったかもしれない。 「……くっ…」 居たたまれなくなった俺は、早足でその部屋から出て行った。 「紅蓮君…ちょっといいかい?」 外で星を眺めていると、おじさんから声が掛かる。 「…おじさん……すいません…。俺が間に合っていれば、蒿は助かったかもしれない……死んでいなかったかもしれない……」 「紅蓮君は悪くないよ……。それより、君には伝えた方がいいと思ってね……これを…」 おじさんは頭を下げる俺を、慰めるように優しく起こす。 そしてポケットから血にまみれた……蒿の携帯電話を取り出し、俺に渡した。 「これは……?」 「……蒿の最後の言葉が……書いてある。読んでくれないかな?」 俺はおじさんに言われるまま、携帯電話を開く。 そこにはすぐに読めるようにしてある、蒿の遺言が映し出されていた……。
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