PROGRAM1 消失~起因する物語

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「ご馳走さまでした~。」 俺の隣で満足そうにそう言って、アリスは再び自分の部屋へ帰って行った。寝間着のままだったから制服に着替えにいったんだろう。時計を見ると7時50分を指していた。 「遅刻しなければいいんだが…」 朝食を食べ終わり、そのままテレビを見ていると、新聞と同じ内容を報道している最中だった。 [先日、東京近辺で東都軍と神影の軍事衝突がありました。この衝突で神影の半数近くが死亡、東都軍にも200名程の死傷者が出た模様です。神影の幹部は全員その場で拘束され、いまは東都軍の拘束下にあるとのことです。残党及び内通者の正確な数は未だ分かっていませんが、東都長は会見で「死力を尽くして調査を進めている」と、今朝の会見で述べていました。] 義父さんも大変だな…… 義父さんはこの東都の都長をしている。だからニュースにでて来ることもざらじゃない。 その分、帰りが遅くなって義母さんに閉め出されることもある。仲はいいんだがな…。 かわって、神影というのは皇政派の一派でその皇政派の中では義に徹しながらも、様々なテロを起こす特異なテロ組織である。そんな奴らもさすがに終わったか?そんな事を考えているうちに、時計は8時になっていた。 「マズい…」 そう言って急いで鞄をもって玄関に急ぐ。 「すまん、遅くなった…」 「いや…いいよ。いつものことだし…」 そう言って呆れているのは俺の幼なじみの矢島蒿(やじまこう)。そしてその隣にいるのは同じく幼なじみの霧賀 雛(きりが すう)だ。 「そいえば、アリスはどうしたんだい?ここに居ないけれど…」 雛はそう言って、俺の肩越しに家の中に視線を移した。 雛はいつも表情が表に現れることがない。時折声色を変えるぐらいで、それ以外は無感動で過ごしている。だからこいつの考えはいつも読みづらい。 「ああ、アリスならマイペースに準備をしている。全く…アレさえ無ければ完璧だというのに…。」 アリスはどんな時もマイペースに過ごす癖みたいなものがある。いや、正確には子供っぽい所がマイペースなのだが……。 学校では学級委員長を務めていて、それで男子どもの人気も高い。 「じゃあ…今日も遅刻かな…」 溜め息と同時に、蒿は上半身を屈伸のように垂れ下げた。俺と雛はそれを一瞬見て、何事もなかったかの様に玄関に顔をそらした。 「いやいや、無視しないでよ……」
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