27人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
「遅いぞ!三人とも…」
教室に入るのと同時に、俺達のクラス担任である宮方 京志郎(みやかた きょうしろう)が俺達をその鋭い眼光で睨み付けた。それに驚いたアリスが「ひぃ!!」と言って、蒿をの背中に隠れ、蒿は一歩後ずさった。
「すいません…こいつがいつものように遅かったもので…」
俺がアリスを指差しながらそう言うと、京志郎は仕方ないといった様子でため息をついた。
「はぁ…仕方ない。今日は体育測定もあるから、罰はなしだ。次からは気をつけるのだぞ…立花君…。」
「はぁい…」
アリスは蒿を盾にしたまま返事を返した。
アリスが京志郎を怖い気持ちはよくわかる。なにせ元軍人で、その眼孔は衰える様子がなく、むしろ日に日に鋭くなっているようなきがする。それに俺にとっては剣道部の顧問であり、幼いころから刀術をならってきた師匠でもある。
怖くないはずがない。
「とりあえず三人とも席に着きなさい。」
「はぁい…」とアリス。「失礼します…」と蒿。「…」と俺が続く。
俺達が席に着いたところで、京志郎がホームルームを始めた。
「えー。さっき話したように今日は体育測定がある。各自ジャージに着替え、体育館に行くように」学級委員長のアリスが続けて
「起立!礼!」
と号令をかけ、ホームルームはものの数十秒で終了した。
「そういえば、雛はどうだったんだろう…」
男女分かれてジャージに着替えている時、俺の隣で着替えてていた蒿がふと呟いた。
「なにがだ…?」
「いや、遅刻したからさ…大丈夫だったかなって。」
雛は俺達三人と違って、別のクラスに通っている。
俺達は就職を前提としたクラスにいるが、雛だけは進学を前提とするクラスにいる。俗にエリートクラスと呼ばれるが、雛はその中でも成績上かなり下位にいる。正直、雛が進学出来るか怪しいところだ…。
「大丈夫だろう…雛のクラス担任はそういう所かなり適当らしいからな…」
「なら、いいんだけど…」
蒿は納得しない様子でジャージの上着を羽織った。
最初のコメントを投稿しよう!