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「…?なんだ、雛か。風紀委員のお前が自分の教室から出るとは、めずらしいな?」
俺が考え事をしていると、いつも見計らったように雛が話しかけてくる、未来でも見えてるのか?
コイツは。
「何もなければ出て来はしないよ。アリスが帰るそうだから、それを伝えに来たんだ。」
「そうか…一人で帰れるのか?…アリスの野郎。」
アリスは保健室に運ばれる時に担架に乗せられていたのだが…大丈夫なのか…。
「タクシーを呼んで帰るそうだよ。保健室の先生の話だと、アリスの腹痛はウイルス性の可能性があるらしいから途中で病院に寄っていくみたいだけれど……」
「そうか。それで、蒿の方はどうだったんだ?」
「ああ、蒿なら食べ過ぎなだけらしいから、しばらくすれば戻ってくるよ」
俺はそうかと一言返すと、また運動場の方を見た。ガラスに反射した雛の姿が、教室を出て行くのが目に入っていた…。
「ああ、暇だ。早く帰ってこい…。」
「イタタたぁ…。食あたりなんて…ついてないなぁ…はぁ…。」
私は迎えのタクシーを待ちながら愚痴をこぼしまくっていた。普段から沢山食べるからあの程度の量でダウンすることなんて…まずない。
「何で私だけ…あ…」
そんなこんな愚痴をこぼしまくっていると、タクシーが視界にはいってきて、私の前で停車した。
「やっと来た~。」
助かった!おなかが痛いと立っているのも精神が削れるようだ。私はタクシーに乗車して、防弾ガラス越しに運転手さんに病院に行ってくれるように伝えた。すると…
「…残念ですがお客様…今日は病院は閉院しておりますよ。代わりと言ってはなんですが、東京へご案内いたしましょう。」
「…えっ!」
運転手さんの最後の言葉に、私は本能的に悪寒に襲われた。それと同時に座席の至る所からガスが噴出してきて、あっという間に後部座席に充満した。
「だ…出して!誰か!!…助け…て……蒿…く…」
抵抗する暇もなく私の意識は遠くなってゆき、体から力が抜けて行くのがわかった。
「さて…計画を開始致しました。……殿…では、手はずどうりに…」
意識が落ちる瞬間、懐かしい名前を聞いた気がした…。
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