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木と木の隙間から光秀が姿を現した。
「光秀殿にはすまぬが、これも仕事でな死んで貰う」
「まぁ待ちなさい、何故貴方が私を殺そうとするのですか?理由を教えてくだされ」
光秀の問い掛けに分からないと答えると、はぁと溜め息を吐いた。
「これで何度目でしょう…か」
「何の話だ?」
「貴方が来るまでに他の人達も貴方と全く同じ理由で、私を殺そうとする者が現れましてね。本当に迷惑しているんですよ」
と言うと刀を抜いてこちらに向けて来た、それに合わせて菊一を抜いた。
「参る」
「いきます!」
光秀の袈裟掛を交わし横一文字に首を狙ったが交わさた、光秀は交わすと同時に突きを放ってきたがそれを今度は刀で弾く。
お互いの攻撃がなかなか決らない以上、無暗に刀を振るうことは出来ない。
「なかなかやりますね、少しだけ見くびっていたようです」
「気にする事はない、某もお主は弱いと思っていたからな」
フッと笑うと正眼に構え直した。
「……」
さっきとはまるで別人に思え、平八郎の手にも自然と力が入っていく。
「でやぁ!」
「とう!」
光秀は額を目掛け刀を振り卸し、平八郎は懐に入り込んで喉を突こうとして居た。
「そこまでじゃ!!!」
いきなり入って来た声に、お互いの体がぴたりとその場に止まった。
「全く騒々しいと思えば…… 光秀! これは何事じゃ!」
暗くて良く分からないが身分の高そうな人物は、二人の死体を見て指をさした。
「これはこの者の仕業でございます、道三様」
道三と言えばここの城の主だ、そこを忘れてしまった自分を情けなく思った。
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