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長良川に布陣した義龍の軍が徐々に近付いた頃、光秀は道三の居る陣の正面に構えた。
「光秀、お主には申し訳ない役目を任せてしまったな。だが、お主の実力ならいずれは天下を目指す事もできるだろう。」
主の一言に驚きを隠せなかったが、何も言わず頭を下げた。
「儂はこれで本当の隠居になりそうじゃ」
「何をおっしゃいます、まだ道三様には生きて貰わねば困ります。」
長良川に布陣する前、嫡男義龍は父を抹殺する為に兵を上げる事にした。
自害を促す為に道三が可愛がって世話をしていた、龍重、龍定の二人を暗殺した。だが、道三は切腹はしなかった。
そんな経緯があって、長良川に布陣する事になった親子の争いが始まろうとしていたのだ。
「義龍様、真に道三様を殺しますか?」
「何だらっぱのくせに、口を出すで無い。」
「作用ではありますが、敵の明智光秀と言う男はなかなかの腕の持ち主……」
「だったら何だ、いくら腕が良くても多勢に無勢。光秀が死ぬのも時間の問題だ。だが、今度の戦は道三さえ打ち取れば良い。しくじるで無いぞ」
光秀は自分の陣に戻り地図を広げた、この戦に勝てる何て鼻から思っていなかった彼は、誰にも見つからず素早く安全な場所へ行ける方法を探していたのだ。
「光秀様、道三様は元より討ち死に覚悟に御座います。」
「そんな事分かって居ます、ですがみすみす殺させる訳にはいかないでしょう。」
「……」
この時には既に森家は織田へ下って居る、光秀は森家の誘いを断ったのだ。
(美濃は、義龍様の物になる……とすれば上洛する事ことこそ得策か)
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