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光秀の陣に一通の手紙が届いたのは、逃げ道を考えている最中だった。
「ご苦労です」
「はっ!」
手紙を開けると差出人に、平八郎と汚い文字で書かれていた。
〈義龍様は左翼、正面より力攻めにて押し入る様子。また、光秀様他家臣の命より道三様一人の首を狙っております。〉
平八郎が光秀の部屋に侵入した夜、訝しく見てくる光秀を説得しらっぱとして仕える事の許しを得たのだ。
「全く、何を考えているのか分からない人だ。」
「何か申しましたか?」
兵の問いには答えず、にやりと笑みを浮かべた。
義龍は自陣で一人になった所で、初めて溜め息を吐いた。
「父上……、申し訳ありませぬ。……申し訳ありませぬ」
と呟いていた。
(…………)
屋根裏から盗み聞きしていた平八郎はこの戦いには、何か裏があるのかも知れないと悟った。しかし、既に戦は始まる寸前で間に合う筈も無く無情にも、法螺貝(ほら)の音が敵味方問わず鳴り響いた。
義龍は左翼、中央から予定通り攻めて来た。しかし、更に右翼からと既に配備されていた奇襲隊により、前後左右から敵に狙われた。
これには平八郎が驚き光秀の陣に向かおうとしたが、それを見抜いたかの様に黒装束を来た輩が数人現れた。
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