一章

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黒装束に混じり。一人だけ紅装束を身に纏った輩が、集団の先頭に立ち塞がった。 「桂平八郎、またもや主を裏切るつもりか?」 その声に聞き覚えがあったが、名前は言わず黙って耳を傾けた。 「某は主を裏切った覚えはない、むしろ裏切られた事ならあるがな」 「戯言を申すな!」 小太刀の切っ先が空を斬り、平八郎の首根っこを襲って来た。平八郎は身をよじり何とか交わすと、菊一を片手にだらりとぶら下げる様に構えた。 「お前達は手出しをするな!」 黒装束の輩は戸惑いながらも、武器は納めず二人の戦いを見る事にした。 二刀流と一刀流だが紅装束は小太刀と言う事もあり、懐深く攻めなければ致命傷を負わせる事は難しいと言う事は、平八郎は良く知っていた。 「でやぁ!」 だが、それを諸共せずに突進して来ると左右の小太刀を巧みに操り、左右上下自在に襲って来た。 平八郎は防ぐだけで一杯だったが、攻撃が出る瞬間わずかな隙が生じた。そこをついて菊一の刃を返し首筋へ叩き付けた。 「あっ!」 小さな声を漏らすと紅装束を着た者は、くねりとその場に身を崩し落した。
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