一章

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頭がやられ黒装束の輩は動揺が隠せないでいた、その隙にその場から煙の様に平八郎は姿を消した。 「っち、逃げられたか……」 「女が頭なんかやるからこんな事になる、これで六角様も考えを改めるだろう」 光秀は美濃三人衆の一人、稲葉一鉄の軍と交戦していた。圧倒的な数に対して戦っているにも関わらず、どちらも引かない攻防戦だ。しかし、ここで長居をすれば確実に道三の命は無い。 (どうしたものでしょうか) この状況を打破しようにも、重臣が相手ではそうも簡単にはいかない。 足軽が次々と乗り込み机や椅子などを薙ぎ倒しながら、じわり、じわりと光秀と間合いを取った。 刀を鞘に納め槍を手に、右に居た男の首を飛ばすとその胴体を左に突き飛ばし正面の男の足に槍を突き刺した。それと同時に、腰の刀を抜いて後ろから来た足軽の喉を突き刺すと、敵から槍を奪い取り左右に切っ先を振った。 一気に七人の屍がその場に転がった、武将だけあってこの状況でも冷静な判断で何とか凌いだ。 「…くっ!」 安堵した束の間、足に体に痛みが走った。どうやら誰かが放った矢が足を貫いたらしい。 「光秀、お主は確かに強いが多勢に無勢……命まで取るつもりは無い。今からでも殿の元へ来ぬか?」 足軽が持つ槍より、更に長い槍を持った稲葉一鉄は再三に渡り勧誘して来たが、今までそれに応じなかった光秀の事を少しばかり関心する様になっていた。 「いくら一鉄殿の頼みとは言え、私は…… 義龍様に付く気はありません」 この状況下でも勧誘を断る光秀に、一鉄は肩で息を吐いた。
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