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道三の居る本陣には義龍自ら切り込みを行った、君主自ら最前線に出るとは予想もしていなかった道三は。
(あやつは無能者では無い……、儂より才能を持った男のようじゃ……)
親子喧嘩をした際に、道三は義龍の力量を無能と言い相手にしなかったが自分より知略もあり、武勇もある将はそうも居る者では無い。
「父上……、大人しく首を」
「ふははははっ!」
道三は声を大にして笑うと、持っていた刀で腹を斬ろうとした。だが、何も知らない二陣が攻め込んで来て不意を付いた道三の首は空しくも宙を舞い二、三度地面を転がった。
「斉藤道三討ち取ったり――」
義龍は父が意を消した最後を迎えようとしたのを、邪魔をした男の首を切り落とした。
「何故分からぬ、なぜ誰も分かってやらぬのだ!」
と言い残して陣を後にした。平八郎が足軽を倒しながら、本陣に着いた時には既に遅く、道三の胴体と守護兵の死体が辺りに倒れて血生臭かった。
「何と……」
声に出して呟いた平八郎に気が付いた。光秀は道三の胴体に向かって両手を合わせ合掌をしていた。
「……光秀様、申し訳ありませぬ。某の到着が早ければ」
光秀は何も言わず黙ったままだったが、平八郎もそれ以上言おうとは思わなかった。
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