二章

2/21
前へ
/217ページ
次へ
義龍は長良川の戦い後、光秀と平八郎へ刺客を送っていなかった。その為安全に京入りする事が出来た。 京は都と呼ばれ室町幕府足利家のいる国で、金閣、銀閣の二つがあり城下町は栄え人で溢れてはいるが気風もあり、心地よい風が西から東へと向いて流れた。 「都とは無縁の土地と思っておりましたが、どうやらそうでも無いみたいですな」 初めての京に平八郎の心も弾んだ。光秀はそれを見て少し笑い、足利義輝の元へ向かった。その場には忍は居られないと言う事で、話が終わるまでの間、京の町並みを見ながら探索していた。 (此所だけはまるで平和だな) 他の国が日々争い血を流している、その光景が目に慣れた平八郎の素直な気持ちだった。 「うちの顔に何か付いとります」 京弁で話しかけられ少し驚きながら、まるで異国の者と話す気持ちでしどろもどろしていると、女はくすっと笑って姿を消した。 (何なんだ此所は……) 胸の内で考えて居ると、何処からともなく魚の焼ける臭いが鼻を衝いた。 腹の虫がなりまだ何も食べて無い事を思い出した平八郎は、近くにあった飯処さきやの暖簾を潜った。 光秀から預かった金子を先に払った。膳には焼魚と白飯に大根の入った味噌汁に茄子の漬物が付いた物が運ばれて来た。 「これはうまい!」 うんと頷きながら、塩焼魚を食らい飯をほうばる。 魚だけで飯を三杯お代わりする。その食欲ぶりにはさきやの主人も驚いて居た。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

288人が本棚に入れています
本棚に追加