二章

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織田信長に付く前に、光秀は義輝の頼みで朝倉へ行く事になった。 「お主から上洛するよう促してはくれぬか?」 さきやに戻ると部屋で大の字に寝ている平八郎の姿があった、これが本当に忍の姿なのだろうかと疑問に思った。 「申し訳ない光秀殿……」 寝ていた事を謝った平八郎は、直ぐに端へ行き正座して座った。 「義輝様から朝倉義景様の下へ行くようにとの事です」 「……朝倉……」 朝倉家が足利家へ意向をしめしていないとなれば、南近江の六角定頼も黙ってはいないであろう。 それに加えて甲賀武士や忍が攻めて来るような事があれば、それに乗じて桂平八郎の命も奪われ兼ねない。 光秀にお供する事を誓った平八郎は越前行きを承知し、早速旅支度を始めた。 余談だが、楽市・楽座を築いたのは織田信長では無く、この六角定頼であり信長は定頼の楽市の案を利用し拡大させたのだ。 京から近江を通り、そのまま甲賀に入った。 甲賀は村を脱走した以来、近寄り難かったがこんな事で故郷を通る事になるとは思っても居なかった。 「……何が起きても知りませぬぞ」 「大丈夫でしょう、日の明るい内に誰が襲ってきましょうかね」 平八郎は、確かに…… と言って頷いた。 時折感じる視線を気にしながら、国境までやって来た。何事も無く無事に朝倉家へ着いた、光秀と平八郎は義景に仕える事になった。 家臣になれば確実に話を聞いてくれると、思っての事だった。
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