一章

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赤間の部下はは里へ戻ったが、九ノ一(クノイチ)や、六角直属の忍び集団は未だに山から、町まで調べて居た。 「っち、ここもか」 いつも世話になっていた、料理屋のこずやを屋根上から観察して居たが、普段はいない飴売りや水売りの連中が行ったり来たりしているのが目に入った。 (あれでは、いかにもだな。) 外にいると言う事は、中にも客を装った甲賀忍が居てもおかしくは無い。 諦めて直ぐに近江を離れる事にした、近江から越前へ向かい小山を背に美濃へ向かう。 (此所までくれば安心か) 胸の内で頷き、辺りを見回すと誰も使って無いような小屋を見つけた。 (此所で今日は休むか) 戸を開けると誰かが暮らしていたような跡が残っていた。藁が日に焼けて黒くなっており、かなり昔に誰かが暮らしていたのだろうと思わせた。 甲賀の里では選ばれたら甲賀武士と甲賀忍による、会議が始まっていた。 「あ奴の才能は天下を揺るがす事も、簡単にやってのける奴だ。何としても捕まえるか亡き者にしろ!」 普段の平八郎しか見た事の無い武士達は、力量を見計らい逆に平八郎の手に掛かった。 幼い頃から'暗殺'だけを教わって生きたせいか、実生活の彼は何処か浮いた存在である。それすら気がつかない、武士が相手をしても意味が無いと判断して、平八郎と交友のあった者達が集められた。 (兄者……) その中でゆいつ平八郎が得意げに自慢して来た教え子、旭川春霞(あきかわはるか)は平八郎がなぜ脱走したのかその真意をつき止めてやろうと胸の中に誓った。 夜が開けて越前を後にし、斉藤道三が納める美濃へ着いた。 (美濃と言えばやはり蝮殿に、挨拶をするべきであろうか……) 少し悩んだが今は止めておく事にした。
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