仮面

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付き合って3週間が過ぎたある日 母親と二人暮らしの彼のアパートへ誘われて 行く事になった。 前に友人と何度か来た事はあったけれど その日は初めて一人で行った。 『どうぞ。』 緊張した様子の私に彼はいつもの優しい笑顔 で言った。 『…お邪魔…します。』 彼の母親は出掛けていて、彼と二人きりの室内。 白い壁と白い電化製品達に囲まれた 殺風景な部屋。 キョロキョロ部屋を見渡しているうちに 視線を感じて 彼と目が合った。 こんな時 いつもすぐに笑顔を見せてくれるのに いつもと違う彼の雰囲気に戸惑った。 『…そろそろ、いいよね?』 そう言うと彼は真剣な顔で あたしの肩をギュッと強く掴んだ。 状況がわからず言葉に出来ないまま ベットに押し倒された。 『!!!!!』 忌々しい、あの記憶が すぐに鮮やかに頭の中に広がった。 その瞬間、彼を強く押しのけて 声も出さず全速力で走って逃げ出した。 
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