日曜日

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  出前の皿を洗いながら、思い出していた。 忘れた事はない。 後7日で私達は大きな喧嘩をする。 あの喧嘩を境に、私達は大きくすれ違い、戻れなくなる。 嘘の様だ。 一週間前の二人はこんなに笑顔だったのに? 本当にそうだったのか…思い出せないが… …顔を赤く腫らして私の上に乗る亮の顔… 私の首に掛かる亮の熱い…手を… ……息が出…来ない。 きつく目を閉じたが、体が震えた。 耳の中でガラスが砕ける音が反響し、逃げる私は…玄関で蹲る。 怯える私に、自分の両手を見て戸惑う亮。 私達は、本当に些細な出来事が…重なって重なった喧嘩をした。 それが…分岐点だったんだろうか…。 亮は、その喧嘩をきっかけに今の職場を辞める。 私のトラウマのせいだ。 今の私には、一週間後に起こる事が分かっている。 加速していく破局への道も…その間の恐怖も焦りも。 その後に訪れる別れも。 (回避出来る?) 心によぎる声。 (あの笑顔を手放さないでいられる?) 心に響く声。 (あのピースの様に私に填まる体も…?) 震える指が水に触れる。 (そうなの?) 心で声がこだまする。 (だから、私はここに帰って来れたと言うの?) あれから何年もの間想い続けた… …後悔。 (今の私なら回避出来る。そうなの?) (許されるの?) 流れる水を止める事無く流し続け考えた。
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