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出前の皿を玄関の外に出し、私は玄関の鍵をしチェーンを掛けるとそのままロフトへ上がった。
亮は、Macに向かい仕事をしている。
私が寝てもいいようにと、手元を照らすスタンドの光りだけが亮を照らしていた。
亮の後ろにそっと腰を下ろすと背中に額を押しつける。
(温かい…)
じんわりと彼の体温が伝わり、胸が締め付けられた。
こんなに温かくて切ない背中を、私は他に知らない。
私が私でいられた、唯一の場所。
背中を小さく振動させ、額から亮声が響く。
『どうした?本当に。今日の愛…なんか変だよ。』
振り向こうとする亮の背中に手を触れ、振り向かないでと制する。
『うんん。なんでもないよ。亮…好きだよ。本当に…。』
額をギュッと押し付ける。
また、亮の声が骨に染みる。
『知ってるよ。もう少しかかるからさ、先に寝ていいよ。』
亮はスッと手を後ろに伸ばし、床に置いた私の手に重ねるとゆっくり五回手を握る。
私は額を動かし二回頷く。
私は背中からそっと離れると、ひんやりとした布団に滑り込んだ。
(ねぇ…亮…)
滲む視界で捉えた背中に小さく呟く。
(手放したくない…。)
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