13人が本棚に入れています
本棚に追加
『ねぇ、亮ぃ。』
後片付けをしながら、亮に声を掛ける。
ロフトで仕事を続けている亮には届かない。
一端、水を止め亮が見える位置に移動する。
『ねぇ、亮。お湯はる?』
ユニットバスだから、お湯をはるのかよくこうして聞いていたのを思い出した。
『うーん。今日はいいや。愛が入るならはっていいよぉ』
『分かった。じゃあ、そうするね。入りたくなったら声かけてね。』
『了解。』
亮は、締め切りに向けて忙しそうだった。
記憶の中でも確か休みなく働いていた。
夜も終電ギリギリだったり、逃すとデスクで寝泊まりしていたはずだ。
今はやっと家でも出来る作業になり、少し早く帰っては来るが、パソコンの前から離れる時間は少ないはずだ。
あの頃、私は寂しくて我が儘ばかり言っていた。
会えない淋しさから、夜中ずっと電話していたこともある。
なんで、寝かせてあげなかったんだろうと今は思う。
でも、当時の私は出来なかった。
簡単な事だったはずなのに…
本当に馬鹿だ。
過去の自分に呆れた。
明日は、家に帰って手帳をと着替えを取りに行こう。確か、私は手帳をつけていたはずだから、家に行けばきっとあるはすだ。
数日の亮の仕事予定を確認したいし、流石に私も忘れてる事だらけだし…。
落ち着いて考えないといけない気がした。
そう。そんなに簡単に防げるはずはないのだから。
最初のコメントを投稿しよう!