日曜日

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  顔をしかめ、ゆっくり目を開けたが…昇り切った光が目に染みる。 私の視界に人が映る。 (誰…?主人じゃない…) ……亮(あき)? そこには亮が居た。 細く目を開いた私に優しい声で聞く。 『どうした…具合でも悪い?』 少し心配そうに大きな二重で私を覗き込んでいる。 ぼんやりと戻り始めた意識の中に、私が何年も想い続けた顔がある。 何が起きているのかと、思考が停止ししたままの私を真っ直ぐ見つめたまま静かにもう一度亮の声が降り掛かる。 『どう…した?』 亮の唇はそう動いている様だが…私は理解が出来ないでいた。 驚きで声が玉の様に固まり、喉の奥から押し出す事が出来ない。 私は、バネの様に体を起こし、周りを見渡した。 壁には布と共に下がる沢山のピンバッチ、三本のギター、小さなデスクには亮が大切にしていたMacが見えた。 そこは間違いなく、昔別れたはずの恋人の亮の部屋のロフトだった。
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