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私は…あの日亮と別れ、そのずっと後に別の人と結婚した。
彼とこうした時間を過ごして居たのは、かなり昔の事だった。
そのはずだ…。
でも、信じられない事に私は、今…亮の部屋に居る?
あの日の私のままで。
私の混乱は最高潮に達していた。
鏡の中の自分を何度も見つめる…。
(髪も、体も私のモノだ。)
『あ……。』
声を出し、口を動かす…
(寝起きの低い声も私…)
私は…結婚して暮らしていたあの家に居たはず。
眠ってた?いや、覚えていない。
目覚める前…眠りにつくまでの記憶も曖昧だ。
記憶を辿ろうとすると、チクリと地味にこめかみが痛んだ。
鏡に亮が映り込む。
真剣に鏡に映った自分を眺める私は、扉が開く音すら気が付かなかった様だ。
亮は、いつもの様に優しく私を背中から包む。
『どうしたの?本当に…』
そう呟きながら、私の耳や首筋に唇を這わす。
ゆっくり…そっと…シャツの隙間から指を滑り込ませ、私の体を優しくなぞる。
私の唇から甘く短い吐息が漏れる。
やっぱり…亮だ。
間違うはずはない。
本物の亮が、私を誘う様に体に触れてくる。
…亮…だ…。
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