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式も無難に終わり、帰り道母親達はあれやこれやと世間話に花を咲かせる。
「遼ちゃん、帰ったら遊ぼうよ!」
この少年は近所に住む小幡優太。幼稚園から一緒でいつも遼平の後を付いてまわる内気な幼なじみ。
『うーん…。じゃあ海いこーよ。』
「えー?僕んちでテレビゲームしない…?」
『優太はいつもゲームばっかり。嫌だよ~。』
「どうせまたサッカーでしょ。僕、疲れるから嫌だなぁ。」
『じゃあ、いーよ。一人でするから。』
「…。わかったよ。僕も行くよ。」
遼平が言う海とは海岸の砂浜の事で、遼平や優太の家からは国道をわたるだけですぐ海へと着く。
遼平にとって何をするにしても遊び場といえば一年中砂浜だ。
こんな幼い時からすでにワガママな遼平、結局従う優太の関係は出来上がっていた。
その後も何気ない会話をしながらお互いの家へと向かう。
『優太ぁ!後で迎えに行くからなぁ~。』
「うん。待ってるね。」
そう言ってひとまず解散した。
4月上旬、まだ肌寒さの残る季節。
ただなんとなく遼平はふと空を見上げた…。
空には、その存在を示すかの様な音を響かせながら、白く長い一本の轍が創り出されていた…。
何故か胸がワクワクした遼平だった…。
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