眠れるピッチのエース。

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後半、立ち上がり夏目を中心に笠山中が細かくパスを繋ながら柴谷中に攻めかかっていた。 一旦ボールを後ろに戻したかと思えば、ダイレクトでサイドにふったり、ボランチの二人も相互に前に出たり後ろに下がったり、まだ不慣れではあるがなんとなく感覚を掴んできている。 たまにパスミスを犯し柴谷にカットされるが、またすぐ奪い返す。 先程までのスピードは多少落ち着いたが、完全に笠山中は中盤を支配し始めていた。 じわりじわりとボールを繋いで敵陣へと攻め込む。 そして、ついに隆志と遠山が動き出す。 (そろそろ行こうか…。) 隆志はそう思い、遠山を見ると遠山も目を合わせ軽く頷いた。 (なんだ?この感覚…。来るぞ。) 柴谷中の林は前半と明らかに違う攻撃の笠山中にふと違和感を感じた。 『おい!来るぞ!当たれ!』 林は大声を張り上げチームメイトに指示を出す。 それでも、林の中で絶望的な感覚がどんどん増していく。 (ちくしょー、なんなんだ?こいつら。やべーよ。) 林は辺りを見回し、笠山イレブンのポジションを確認する。 (14番のやつ…、確か矢沢って言ったっけ。あいつは、一人ペナルティエリア入ったとこらへんか…。 合わせてくるならこいつにだな。) そう考えた林は味方DFに合図を出し遼平のマークにつかした。 (夏目は…っと。 んっ…?なんだ?なんであいつあんな下がってるんだ?) 林が目にした隆志はボールを流すとセンターライン手前まで一人下がっていた。
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