眠れるピッチのエース。

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隆志は全体を見回しメンバーの位置を素早く確認する。 そして、フラフラとポジショニングしている遼平を見据えた…。 遼平と目が合う。 (ちっ!遼平のやつ、やっぱまだわかりきってねぇーか…。顔に?マークが出てやがる。) 隆志はそう思いながらセンター付近でボールを受け取った。 (ハハッ、まぁ無理ねぇーか…。 しゃぁーない、行ってみっか! 遼平、良く見とけよ!) 隆志は呟くと、まず誰もいない右サイドのスペースに勢い良く蹴り込んだ。 今までは味方の足元に、取りやすいように細かくパスを送りあっていたが、今回隆志の蹴ったパスは先程とは明らかに違う強烈なスピードボールだった。 一気にピッチ上の雰囲気が変わる。 (何!?なんだこいつら…。) 緩く細かいパス回しで翻弄されていた柴谷中イレブンは、この速いボールに反応出来ていない。 隆志の蹴ったボールは柴谷イレブンの間を見事に抜け、がら空きのスペースへ向かう。 そのパスに笠山イレブンが連動していく。 (ナイスパス!隆志。) 右サイドを駆け上がっていた藤川はトップスピードでそのボールをトラップし、 そのままドリブルで中に切り込んでいく。 追いかける柴谷DF が、スピードにのった藤川に追いつけない。 しかし、前から柴谷DFが詰め寄ってくる。 (よし、もらった!) その瞬間、藤川はボールを中に入れずドリブルしたままヒールキックで後ろに流した。
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