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放課後、いつものようにみんなでサッカーをしていた。
今日、優太は風邪で休みだったが、ずっと一人でしていた遼平にとって友達とサッカーするのが楽しくてしょうがなかった。
だが…。
「こっちだー!パース!」
遼平に向かって叫ぶ。
「おい!遼平!パース!」
聞こえているのか聞こえてないのか、いつものように笑顔でドリブル突破していく。
もちろんパスはしない。
「パスしろって!」
敵チームもパスしないのを知っている為、全員で囲んでくる。
いくら上手いと言っても所詮小学生。5人以上に囲まれればいくら遼平でも相手にならなかった。
それでも、また繰り返す。
何度も…。何度も…。
そして、
「俺、やーめた。」
味方チームの一人が言って突然帰って行った。
「俺も!」
「じゃあ僕も…。」
次々に友達が帰って行く。
『みんなぁ~!どこいくの?』
遼平には意味がわからなかった。
『なんで、帰っちゃったん?』
「俺らも帰ろうか?」
残りの男の子達も帰ろうとしていた。
『おい!どうしたんだよ。』
遼平はボールをその場に置いて聞きに入った。
「だって、遼ちゃんとサッカーしてもつまらないもん。…なぁ?」
「うん。だってずっと一人でドリブルしてパスしてくれないんだもん。」
「遼ちゃんにパスしてもぜんぜん面白くないもんね?」
「ごめんね。遼ちゃん。もう一緒にサッカーしたくない。」
『……。』
遼平は何も言い返せなかった。
そしてとうとうみんな帰って行き、その場に残ったのは使い古びたサッカーボールだけだった…。
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