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――六年前――
生徒が二人、時間が放課後から夜へと移り変わろうとしているとき、薄暮れのグランドから校舎に向かって歩いていた。
上野沢中学の中でもっとも遅く終わる部、陸上部の女子部員だ。他の部員はみんな先に帰ってしまったが二人は当番で後片づけをしていたのだった。
用具室から玄関まで行く途中で一人がふと校舎のガラスに目をやった。
そして――
「ア、ア、ア、アレ見て、アレ……」
「え?何――」
もう一人はそれを目にしたとたん、肩からずり落ちかけたスポーツバッグと隣で硬直している彼女の腕をつかんで走り出した。
――もちろん玄関に向かって。
しかし彼女たちは気が付いていなかった。今の二人は自己ベストを遙かに越えるタイムで走っているということに。
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