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――現在――
月のない夜。
〈学校法人 私立 栄羽学園〉と、レリーフされたプレートに当たる光はない。
学園の人気のない建物からその人物は出てきた。手には大きなスポーツバッグをさげ、辺りをきょろきょろと見回して小走りに闇の中へと去っていった。
しかし、自分を見つめている目の存在に気が付いているふしは全くなかった。
一週間後のことだった。同じように空が雲で覆われた夜、またも栄羽学園の校庭に人影があった。今度は一人ではないようだ。
一仕事終えた様子の彼らは正門の前に集合していた。そして校庭の真ん中の物を満足そうに見渡して門を出た。
その時、雲に隠れていた月が顔を出した。青白い光を放つ真円の月に照らされて、校庭のそれは怪しく輝いていた。
一夜明けて、栄羽学園中等部の用務員がいつものように七時ジャストに通用門をくぐって出勤してきた。朝の見回りを始めようと校庭に出た彼の目に、奇妙な物体が飛び込んできたのはそれから間もなくのことだった。
校舎にほど近い校庭に大きく描かれた机文字。そしてその形はアルファベットのQ――
「なんだこいつは……」
思わずつぶやいた彼は、なぜかこの場にたった一人でいるのが恐ろしくなった。そして唯一自分より先にこの学園にいる人物、すなわち校門のそばに詰めている守衛の所に走り出した。
それが昨日の朝のことだった。
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