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あれから数日、毎日、彼女の元に通っていた僕に、おやつをくれながら彼女は言った。
「ねぇ、くろねこくん。君に名前はないの?」
僕に名前なんて特になかった。
人間達はみんな僕を ねこ とか くろ とかありきたりな名前で呼ぶし。
ねこたちにとっても、人間をたすける僕らくろねこが嫌いだから、名前で呼ばれることもない。
僕は不思議に思って彼女をみつめた。
「いつまでも、くろねこくん。だったら失礼じゃない?ずっと考えてたんだけど、君に名前をつけてもいいかな?」
答えなんて返ってくるはずのない僕に、彼女は微笑みながら言った。
僕は彼女が僕のことを気にかけてくれていたことが素直にうれしかった。
僕は、いいよ。ってつもりで「ニャア」と鳴いた。
「ありがとう!!くろねこくんの名前は、チロ。小さなくろねこくんにピッタリでしょ?」
彼女はそう言って、とびっきりの笑顔を僕に向けた。
僕はなによりも想いが通じたのが嬉しかった。
そして、不吉だと言われてるくろねこの僕なんかに名前をくれた彼女が愛しくてたまらなかった。
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