予感

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色恋沙汰は、人並み以上に上手くやって来たつもりだ。 正直、容姿には恵まれてきたつもりだし、女の子、女の人、女性…どう呼ぶのが相応しいのか分からないけど、不自由はしてない。 俺の中で本気の恋も、遊びの恋もしたし…失敗もビックリするような経験もして、今がある。 なのに、この出会いは何かが違う。 特別美人なわけじゃないし、何がぱっとしているわけでもない。まだ深く知り合ってもない…というより、何も知らないというほうがしっくりくる。なのに何故か今までの誰より気になってる。 只、たまたま飲み会で、たまたま女友達が、たまたま連れてきた子だというだけの彼女。 劇的な出会い方でもないのに、何故かひっかかった。脳内にチリっと走った感覚。 …引き止めないと。 自分からこんな本気のアプローチをするなんて、滅多なことじゃない。なのに、自分の感情に戸惑いながらも彼女の腕を取った。その細さに驚かされる。そういう容姿チェックは、普段からぬかりないタイプなのに。どれだけ、彼女が自分の視界にいつも入れるタイプの女じゃないかが分かる気がした。 「なに?」 振り返った彼女の、戸惑いと不信感をあらわにしたような瞳が俺を映していた。こんな瞳で見られることに、慣れていない。 「いや…えっと」 自分でも、何故引き止めたいのかが分からないから応えようがないんだ。 都合の良い女の扱いだったらいくらだってハッタリや、言い訳なんてオテノモノ…なんて知ったら、周りの女は怒るのかもしれないけれど。 この感覚だけ、分からなくて戸惑う。 「離して…」 「あぁ、ごめん」 離した指先に残った感触。 名残惜しいって言葉はこういう時に使うのだろうかって、どこかでそんなことを感じた気がした。
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