苦悩

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拓也は待ち続けた。     誰かが図書室のドアをガラッと開ける度にドアの方に目がいってしまって、本を見てはいたが実際ほとんど読んでいなかった。           あっという間に時間が過ぎて放課後のベルが鳴った。         拓也はもう本を読む真似もやめてドアの方ばかり気にしていた。       もう来ないかと諦めかけたその時、真希がやってきた。         「やっぱり可愛い…」   拓也は昨日話したばかりなのに時間が空いて話しづらくなってしまっていた。       困っていると真希が拓也を見付けて話しかけてきた。       「拓也君。今日も来てたんだ、本当にいっつもここにいるの?」       拓也は話しかけてきてくれるとは思ってなかったので慌てた。       「う…うん。ここが居心地いいんだ。」   「山村さん今日は本借りにきたの?」     真希はキョトンとした顔をしたが微笑んで答えた。   「拓也君って面白い。図書室なんだから本しかないのに。   あ、ちなみに“山村さん”じゃなくて真希だよ。」     拓也は真っ赤になって、「女の子を名前で呼んだ事なんてないから…」と口にするのがやっとだった。     真希は拓也の正面に座って拓也をチラッと見た。   「じゃあ私を名前で呼んだら慣れるんじゃない?」     と言うと持ってきた自分の本に目を向けて読み始めた。
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