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拓也の通う学校は中庭に木製の大きな丸い屋根が付いたスペースがあり、中には同じ木製のベンチが円を描く様にいくつかおいてある。
屋根に細工された穴からは所々に日の光が当たって幻想的な雰囲気を醸している。
「あたし、ここが好きなの。」
真希はニコッと笑ってそう言うとベンチに腰掛けた。
「こんな所あったんだ…」
「ここって中庭にあるのに学校にいる気分がしないから私、何か嫌な事があるとここに来て本読むんだ。」
「いい所だね…」
拓也は心底そう思った。
「拓也君も座りなよ。ここ日が当たって気持ちいいよ。」
拓也は言われるまま真希の隣に座った。
本当に気持ちいい。
「いい所だね。教えてくれてありがとう。」
真希は“どういたしまして”という意味を込めて首を横にふった。
「聞いてもいい?」
「……何でいじめられるようになったの?」
拓也は誰にも話すつもりはなかった。
けれど何故か真希になら話しても大丈夫な気がした。
些細な事で目を付けられた事。
それからの学校生活。
あの最後の教室での事……
真希は真剣に聞いていた。
「それ拓也君は悪くないよ。私は友達だからね。」
真希は拓也に笑顔でそう言った。
「うん。ありがとう。」
拓也は生まれて初めて本当の友達が出来た様な気がした。
けれどそれと同時に何故か寂しい気持ちになった。
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