それぞれの哀しみ

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真っ白な洗いたての敷き布を敷いた寝台にに横たわる少年。その顔はとても穏やかで眠っているようにも見える。 しかしそれを囲むように立つ四人の子供達の表情は、少年がただ眠っているわけではない事を容易に想像させた。   「守ってやれなくて……ごめんな柳(やなぎ)」   一番年長者であろう、青年が沈黙を破るように口を開く。 それをきっかけにするように長い黒髪の少女が寝台に近寄り膝をついた。 瞳に涙を溜めたまま。   「もう怖いものは何もないよ。ゆっくり……眠ってね」   少女はまるで母のように静かに柳と呼ばれた少年に語りかけながら、彼の顔にかかる髪を優しくはらう。 その様子を静かに見守っていたもう一人の少女が耐えきれなくなったのか、その場で泣き崩れた。 まだ幼さを残した顔立ちの少年、常盤(ときわ)が泣き崩れた少女を抱き締める。しかしそれは少女を慰めるというよりは、彼が少女に縋っているようにも見えた。   「藤(ふじ)、後は頼んだ」   「青磁(せいじ)?」 「食糧がもうない。調達してくる」 青磁と呼ばれた青年は黒髪の少女、藤に端的に告げると部屋を出ていった。 泣き崩れていた少女は驚いたように顔を上げ、青磁が出ていった扉を見つめる。それに気付いた藤がゆっくり立ち上がり、少女の視線を遮るように扉と少女の間に立つ。 少女の瞳には悲しみと怒りが同居していた。 「青磁は……青磁は冷たいよ! 柳は私達の仲間なのにっ……家族なのに……こんな時くらい食糧の話なんかしなくたって……柳の傍に居てあげてもいいじゃない!」   「茜……」 悲痛なまでの少女、茜(あかね)の言葉に藤は何も言えなかった。茜に抱きついていた常盤すら、その剣幕に気圧され数歩後ずさってしまった。 そしてその言葉は同時に、扉の外に立つ青磁の心をも深く抉っていった。 部屋には、ただ茜の泣き声だけが響く。   その日、部屋にはいつまでも茜の啜り泣く声が、響き続けていた。
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