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男は棺の蓋をそっと閉める。
男と彼女はずっと一緒、永遠を囁きあった薔薇と彼女と言葉と共に、赤い炎に焼かれるの。
赤い炎が薔薇の花びらみたいで、凄く綺麗だったの。
ねえ、素敵でしょ?
この映画を見て、此処の映画館で働きたい!って凄く思ったの。それと同時にこんな恋がしたい、って思ったわ、高校一年生の頃にね。
彼女は潤んだ瞳で言ったのだ。
馬鹿らしいと思った。
けど僕はそれと同時に夢見がちな彼女を愛しいと思った。
その話を聞いた夜に、僕から付き合わないかと言って、付き合いだした。
ロマンチックな彼女のために、場所を選んだつもりだった。
夜景の綺麗な橋の上。
星が僕たちを祝福する様。
貴方と付き合えるだなんて夢見たい、とつぶやいた彼女を抱きしめたあの夜。
今では遠い昔の様。
もうきっと戻れないのだ、あの夜にも、あの橋の上にも。
今まで誰とも付き合ったことが無い、といい僕が初めてだった彼女。
綺麗だった、痩せていて、肌は白くて、本当に。
彼女を手放したのは僕じゃない、僕を手放したのは彼女。
目を閉じれば思い出す彼女の顔。
ふと、力を抜いて肩を下ろす、涙がふいに僕の頬を伝う。
「はは・・・・・・こんなに好きだったなんて、気づきもしなかったな。」
涙を拭いもせず、僕は顔を上げて、天井を見つめた。
白い天井、正方形の板が几帳面に並べられている。
冷たい空気。静かな部屋。
彼女はもう、戻ってこない。
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