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期待に胸を膨らませながら、昨夜は眠りについた。
けれど浮かない顔をして彼女は、待ち合わせの時間よりも1時間早く、僕の家へと来た。
手には大きな紙袋を抱えて。
困惑する表情を見せる僕に、彼女が言い放ったのは、シンプルな別れの言葉だった。
そして手渡されたものは、僕への誕生日プレゼントなんかじゃなかった。
今まで彼女へとあげてきた、思い出の詰まったジュエリーボックス。
ピンクダイヤの指輪や、銀の細いチェーンブレスレット。
それらが入ったジュエリーボックスは、赤い包装紙に包まれて、白いリボンに包まれていた。
彼女の18の誕生日に僕が渡した時と同じ風貌。
訳が分からなかった。
しばらく何も言えなくて、彼女は唇を噛み締めながら、僕にひたすら謝ると、走って僕の家から飛び出した。
マンションの階段を駆け降りる彼女の足音だけが響く。
限界でジュエリーボックスを抱えて、先程まで彼女が居た場所を見つめる僕。
なんて滑稽で無様なんだ。
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