ジュエリーボックス

4/13
前へ
/14ページ
次へ
期待に胸を膨らませながら、昨夜は眠りについた。 けれど浮かない顔をして彼女は、待ち合わせの時間よりも1時間早く、僕の家へと来た。 手には大きな紙袋を抱えて。 困惑する表情を見せる僕に、彼女が言い放ったのは、シンプルな別れの言葉だった。 そして手渡されたものは、僕への誕生日プレゼントなんかじゃなかった。 今まで彼女へとあげてきた、思い出の詰まったジュエリーボックス。 ピンクダイヤの指輪や、銀の細いチェーンブレスレット。 それらが入ったジュエリーボックスは、赤い包装紙に包まれて、白いリボンに包まれていた。 彼女の18の誕生日に僕が渡した時と同じ風貌。 訳が分からなかった。 しばらく何も言えなくて、彼女は唇を噛み締めながら、僕にひたすら謝ると、走って僕の家から飛び出した。 マンションの階段を駆け降りる彼女の足音だけが響く。 限界でジュエリーボックスを抱えて、先程まで彼女が居た場所を見つめる僕。 なんて滑稽で無様なんだ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加