ジュエリーボックス

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どうして、別れを告げられたのか、そんなことすら分からない。 貴方と居ると辛い、だなんて理不尽すぎる。 僕に何の相談も無しに、一方的に別れを告げた彼女の身勝手な行動に腹が立つ。 僕は手に持ったジュエリーボックスを投げ出したくなる衝動に駆られる。 「ちっ・・・・・・くそっ!」 髪をかき乱す。 そのまま玄関の壁に背中を凭れかけると僕は座り込んだ。 彼女と、別れの言葉を目の前にして・・・・・・何も言えなくなるだなんて不恰好すぎる。 せめて理由くらい聞いておけば良かった。 僕の腕の中のジュエリーボックスを床に静かに置く。 冷蔵庫のモーター音と、時計の秒針が時間を刻む音。 それだけが部屋に響く。 1年間付き合ったんだ。 彼女と。 そう、夢みがちでロマンチストな彼女と。 夜景を見たら、必ず綺麗と言っては、はしゃいで、酔いしれる、そんな彼女。 僕は彼女より年上だった。 余裕を持った表情を彼女の前では崩さなかった。 何がいけなかったのか、検討がつかない。 僕は頭を抱えて悩むばかりだ。
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