ジュエリーボックス

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1階は何もなく、貸し店舗という貼り紙が貼られている、その貼り紙は色褪せて黄ばみ、今にも剥がれ落ちそうだった。 2階へと続く階段を登りきれば、赤いソファーが目に入る、ベロア生地の、とても柔らかで触り心地の良いソファー。 そして受付でチケットとお金を交換する、という役割を果たしていたのが彼女だった。 白いシャツに黒いベストに赤いネクタイ。 シックにまとめられた、制服を身に纏った彼女。 まだ幼い顔立ちが、その中で異様に浮いてて目に入る。 目は大きくはないけれど、黒目がちで、肌は白く。 鼻は高くはないけれど、薄い唇が、とても綺麗だった。 美人ではないけれど、整った顔をしているほうだと思う。 初めて彼女を見てから僕は、こんな古ぼけた映画館に何故、彼女はいるのだろう、といつも考えていた。 そして彼女を見掛けて3度目に、僕は彼女を食事へと誘ったのだ。 戸惑った表情を見せたものの、彼女は承諾し、仕事が終わるまで待っていて欲しい、と告げて、控えめに微笑んだ。 時計の針が8を過ぎた頃に、彼女は待ち合わせをした、映画館の近くの喫茶店に来た。
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