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灰色のブレザーの、学校指定の制服を着た彼女は、先程よりも大人っぽく見えた。
華奢な指先。
はにかんだ表情。
口元から覗かせる八重歯。
時折見せた、屈託のない笑顔。
きっと僕はあのときから、彼女に惚れていた。
彼女のことばかりを考えていた。
何度か遊びに誘い、彼女の口調が敬語から、砕けた喋り方へと変わった時。
付き合って欲しいと僕は打ち明けた。
あの時。彼女が泣いて、笑ってから、嬉しいと言ったことは忘れない。
流れる涙が綺麗だった。
今まで見てきた、化粧で着飾る、周りの女の涙より、何倍も素敵だった。
まるで夜空に浮かぶ星のように美しい涙。
ああ、どうして彼女は僕に別れを告げたのだろう。
彼女が僕を嫌いにならないように、僕なりにやったつもりだった。
服装だって、髪型だって、いつも気を使っていた。
余裕を持った表情も崩さなかった。
何が不安だったんだろう。
辛い、僕といると・・・・・・?
彼女の最後の泣き顔。
胃がキリキリと痛む。
胸が圧迫される心地が気持ち悪い。
深い溜め息をついては、髪をかき揚げる。
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