花火(京関)

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射的に金魚掬い、綿菓子。 田楽の匂いが香ばしく、むせ返るような夏の匂いがする神社の境内。 榎木津に誘拐の如く連れてこられたのは何処かで見たことの有るような風景。 ああ、京極堂の神社だ。 大きく闊歩する榎木津に手をひかれ、のろのろと階段を上る。 途中、猿の癖に動きが鈍いだののろまなどと叱咤されながらの道中だったが、元々の足の長さが違う。 こればかりは仕方がない。 文句を言うなら連れて来なければいいのに―――そう思いながらも口には出せない。 榎木津には何を言っても無駄なのだ。 「おおっ猿見ろ!!鳥と犬と鬼が一緒にいるぞ!!わはは桃太郎でなく鬼というところが見ものだな!!」 「うう・・・桃太郎でもなんでもいいですが・・・痛いですよ」 いきなり首を90度傾けられ、桃太郎だのなんだのと騒ぎだす榎木津。
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