花火(京関)

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ふと視線を感じ目を向けた。 木々に飾られた提灯の下で、闇が夕暮れに侵食している。 「・・・全く。人聞きの悪いことを言わないでくれ君たち。僕は只帰ると言っただけじゃないか」 恐ろしく不機嫌な顔をした京極堂が、榎木津に掴まれた私の手の辺りを睨んでいる。 「きょ、京極堂、君も榎さんに連れて来られたのかい・・・」 何故だか居た堪れなくなり、私は余計な事を口にしてしまった。私は何時もそうだ。 「あっ!!マスカマ!!鉄砲があるぞ!!当ててにゃんこだーーーっ」 京極堂が口を開く前に、射的の景品に目を奪われたらしい榎木津は、そろそろ本格的に泣いている益田と、蚊帳の外でにやにや笑っていた鳥口を無理やりに引きずって、あっという間にいなくなってしまった。
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