†守護者は世界を守る守護神へ†

32/37
前へ
/400ページ
次へ
シオンとシリルはグランを担いでいる為、登り始めた当初よりも速度は落ちているが順調に登っていた。 だが二人の間に会話らしい会話はない。二人ともグランを見て昔を思い出していた。 幼い頃のシオンとグランは、剣術を競い合ってはシオンがボコボコにされ、シリルがその敵討ちと称してグランの頭を叩いて、そのシリルをシオンが止める。 まるでジャンケンのような関係で楽しくて、暖かかった過去の思い出。 だが、最期に待っていたのは胸を引き裂くような悲しい結末。 今すぐにでも泣き喚きたかったが、今は我慢する。全てが終わった時に嬉し涙と悲し涙をシオンと共に流し、悲しみを少しでも中和させようとシリルは思っていた。 (喜びと悲しみ。どっちが大きいのか何て今は分からないけど……今は未来に進まないとね) シリルはグランの顔を覗いて微笑む。 涙が溢れ出しそうになるのを感じて、空いている腕で目元をグイッと擦り上を向き、強く一歩を踏み出す。 それを横目でチラッと見ていたシオンは、妹の成長を感じていた。 (これなら大丈夫そうだな。きっと……すぐには無理でも、いつかは乗り越えてくれる)
/400ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21324人が本棚に入れています
本棚に追加