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だが、それをシリルに教えるつもりはない。本人がそれを知り、理解してしまえば神器を使ってしまうかもしれない。
何よりも、どこからか情報が漏れて狙われてしまうかも知れない。だから誰にも教えられない。
「うん……いいけど、私に出来るのかな?」
「出来る。さっきも言ったけどシリルにしか出来ないんだ。俺とシリルは血の繋がった兄妹だからな」
嘘を吐いた。兄妹だから魔力の質が近くなると言っても、せいぜい六十%程度のものだ。
それが神器を発動させる条件に含まれてない事はシリルも気付いている。
シオンはシリルに指輪を手渡す時、その両手を包み込むようにギュッと握る。
そして顔を上げたシリルの双眸を見つめる。自分と同じ少女の紅い瞳を、少し悲しみを含んだ少女と同じ紅い瞳で。
「頼むな」
「……うん」
シリルは何故シオンが嘘を吐いたのか、よく分からないと言う表情を見せて中心に立つと、神器へと魔力を込める。
するとシオンの時とは違い、辺り一面を真っ白に染め上げるような強い光が神器から解き放たれる。
その光の中をシオンは目を細めてシリルに近付いていく。
ここまで来れば後は魔力を限界まで込めるだけなので、シオンでなければ意味がない。
「シリル、ありがとう。後は俺がやる」
「う、うん……私でも役に立てて嬉しかったよ。この旅の中で私はみんなに迷惑しか掛けてなかったから……」
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