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そしてメルカトルでもシルディア帝国でもない、木々に囲まれた小鳥の囀りが奏でるハーモニーが心地よい小さな無人島。
そこに小さな小屋が建てられていた。
その森の中を一人の少女がスカートをカゴの代わりに使って、様々な果実を集めている。
日に照らされたブラウンの髪を優しく吹く風に靡かせ、日の光で美しい金色の瞳を更に美しく輝かせる少女。フローラだ。
本来ならば戦犯として捕らえられ、生涯を暗く冷たい牢の中で終えるはずだった彼女は、とある理由から捕まるわけにはいかなくなり逃亡した。
「ただいま~調子はどう?」
ドアを開けて小屋の中へと入ったフローラは、採ってきた果実をテーブルの上に転がし、すぐに隣の部屋に置かれたベッドへ近付いていく。
そして一つのベッドに腰を下ろし、笑顔で話し始める。
「まさかね、シオンに連れて行かれたサバイバルでの知識がここで役立つとは考えてもみなかったわよ。ホーント、人生って分かんないわよね」
だが、フローラの言葉に答える声はない。それも分かっているのだが、フローラは話し掛けるのを止めない。
そしてフローラはベッドで眠る自分の髪よりも少し暗いダークブラウンの髪をした少女の顔を撫でる。
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