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ベッドで眠っているのはジェシカだ。
彼女が目を覚ます事はないだろう。まさに彼女は眠り姫と化してしまったのだ。
あの戦で、フローラと王雷が戻ってきた時ジェシカには意識があった。
腹部を貫かれたのだが、奇跡的に大切な臓器を避けていた。いや、刀身の幅を考えると奇跡としか言えないだろう。
すぐにでも止血をして傷を塞ぎたかったが傷は深く、応急処置で何とかなる範疇を越えていた。
だが血を止めなければいけないと判断したフローラは、レヴァンテインの刀身の熱でジェシカの傷口を焼き、大きな火傷痕を残す事になると分かっていながら止血したのだ。
そしてジェシカの顔を見た時、フローラを見て優しく無邪気な笑みを浮かべると、そのまま意識を失った。
それから今日までの一年間、ジェシカが目を覚ます事はなかった。
何度も検査をしたが眠り続ける原因は分からない。
だからフローラは責任を取る為にジェシカの世話をすると決めた。
「あはっ、責任はただの言い訳、逃げ道かな。私は……私がジェシカの傍にいたいだけだよね」
毎日のように語り掛けるがジェシカから反応はない。
それでもフローラは話し掛け続けるだろう。ジェシカが目を覚ますまで何年でも、何十年でも……その命が尽きるまで。
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