†Epilogue† ―Sion―

7/10

21322人が本棚に入れています
本棚に追加
/400ページ
ベッドで眠っているのはジェシカだ。 彼女が目を覚ます事はないだろう。まさに彼女は眠り姫と化してしまったのだ。 あの戦で、フローラと王雷が戻ってきた時ジェシカには意識があった。 腹部を貫かれたのだが、奇跡的に大切な臓器を避けていた。いや、刀身の幅を考えると奇跡としか言えないだろう。 すぐにでも止血をして傷を塞ぎたかったが傷は深く、応急処置で何とかなる範疇を越えていた。 だが血を止めなければいけないと判断したフローラは、レヴァンテインの刀身の熱でジェシカの傷口を焼き、大きな火傷痕を残す事になると分かっていながら止血したのだ。 そしてジェシカの顔を見た時、フローラを見て優しく無邪気な笑みを浮かべると、そのまま意識を失った。 それから今日までの一年間、ジェシカが目を覚ます事はなかった。 何度も検査をしたが眠り続ける原因は分からない。 だからフローラは責任を取る為にジェシカの世話をすると決めた。 「あはっ、責任はただの言い訳、逃げ道かな。私は……私がジェシカの傍にいたいだけだよね」 毎日のように語り掛けるがジェシカから反応はない。 それでもフローラは話し掛け続けるだろう。ジェシカが目を覚ますまで何年でも、何十年でも……その命が尽きるまで。
/400ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21322人が本棚に入れています
本棚に追加