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シリルは今メルカトルにいる。
場所はイルスシティ。
廃墟になってしまってはいるが、ここは彼女の故郷なのだ。
それは彼女だけではなくグランと兄の二人の故郷。
「シリル~!!」
シリルは自分の名前を呼ばれて後ろに振り返る。
そこにはミリアを始めとする元白銀の旋律の面々が駆け寄ってきている場面だった。
「これは姫様、貴重なお時間を割いて頂きありがとうございます」
「いいのよ、気にしないで。私が……来たかったんだから」
ミリアは視線をシリルの後ろへと向ける。そこには二つの立派な墓碑がある。
一つはグランのもの。彼の語った真実をミリアとクララに伝え、二度とそんな事を起こさないでとシリルは訴えた。
グランのやり方は間違っていたが見ていた未来、願った未来が今の世界にはあるとシリルは信じている。
そしてもう一つの墓碑にはシリルの兄の名が刻まれている。
鬼神として、守護者として人々のみならず、メルカトルという大陸をも救ったのだ。命に代えて。
悲しくなかったはずがない。自分の非力さを憎まなかったはずがない。
事実、シリルは茫然自失のまま半年以上の月日を過ごした。
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