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夕暮れの小さな公園。
ベンチに腰掛け時間を持て余す僕の目の前を一人、そしてまた一人と子供達が走り去って行く。
「さぁ、帰りましょ。」
間近で女性の声がして何気なくその視線の先を辿るとそこには最後まで砂場で遊んで居た二人の子供の姿があった。
双子だろうか。
よく似た顔付きの男の子はお揃いの淡いグリーンのパーカーを着せられている。
「ママ!!」
女性の呼び掛けに気付いた二人の声が、まるで言い合わせた様に重なる。
ママと呼ばれた女性は走り近づく子供に穏やかな視線を向けていた。
そんな夕刻の何気ない様子をぼんやり眺めて居た僕の目の前を走り抜けようとした双子の一人が徐にその小さな足を止めた。
夕日に照らされて淡く煌めくまるで翡翠の様な瞳が僕の視線とぶつる。
少し癖のあるブラウンの髪がふわりと初冬の冷たい風を切って近づく。
「お兄ちゃんもお迎え待ってるの?」
舌足らずに言葉を摘むぐ。
「ママ、早く来るといいね♪」
そう言うと子供はまた駆け出し母親の腕に嬉しそうに抱き着くとその場から姿を消した。
「……。」
先程までオレンジ色に染められていた公園は徐々に濃い影を落とし始めていた。
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