双子

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トラックを一瞬にして走り抜ける人たち、その中に一人の女性がいた。 "音羽 律" 彼女は今期の陸上界の有力選手である。 「律ちゃん頑張れぇ!」 そう応援するのは彼女のコーチである"月光 さく" さくは過去に世界大会で優勝し、日本を世界トップにしたことがある。 そして今日の大会"浅草杯"は今年行われる世界統一競技大会の選抜試合にもなっており、さくと律の気合いはいつにも増している。 「今日は曇りねぇ、なんか気分が害なっちゃうわ」 律はそう言うとベンチに座りドリンクを飲みはじめた。 「わぁ!!」 「!!…ゲホッゲホッ! だ、誰よ!むせちゃうじゃない」 「へへぇ、今日も快調じゃん姉貴♪」 そう後ろから話しかけるのは律の妹の"音羽 明流" 彼女も陸上選手として姉の律以上に強豪だったが今は引退しており、その理由は誰にも話していない。 「例の子が気になってねぇ。コーチの家にも来るんだってね。」 『例の子』、明流がそう言ったのは今日この大会で会い、音羽家とさくの養子に来る双子の女の子である。 その子達は生まれてからずっと養護施設で育ってきたが、小さい頃から運動が好きで、特に走ることに至っては歳が三つ上の子と比べても群を抜いている。 そこの施設長の田宮とさくは昔からの付き合いであるので、田宮から 『この子達の素質を研いてやってほしい』 と申し出があり、愛弟子である律の家と自分の家とで一人ずつ養子に貰うこととなった。
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